本 四次元の世界 超空間から相対性理論へ 都筑卓司
都筑 卓司 (著)
一般読者向けの科学解説書である。著者の都筑卓司は、わかりやすさと厳密さのバランスを工夫しながら、多くの縦書きの科学書を出版してきた。本書は1969年に書かれたものを、その後の進展も含めて全面改訂した新装版である。ルネ・マグリットが描いた乗馬のだまし絵のカバーが印象的な1冊。
内容は、副題の示すとおり、4次元空間から相対性理論まで、近代物理学を概観することである。まず4次元空間の説明から始まり、リーマンの球面幾何やロバチェフスキーの凹面幾何など、いわゆる非ユークリッド幾何の話題に触れている。数学者なら、さらに4次元空間の話を続けるところだが、著者は物理学者である。光の速度が一定という話や、それを裏付けるマイケルソン・モーリーの実験の話から、アインシュタインの相対性理論へ説明が及ぶ。それから4次元空間の話題に戻り、ミンコフスキー空間や光円錐の話になり、最後は重力波や宇宙の構造に触れて締めくくる。
さすがに記号や数式をまったく使わずに説明することはできず、わずかではあるが、数学の記法を併用している。したがって、本書を完全に理解するには、高校程度の数学と物理の予備知識が必要だ。しかし、数式などを読みとばしても、全体の8割程度が理解できれば、十分楽しむことができるだろう。
こうした本のわかりやすさは、どんな図解をするかによるところが大きい。本書では、著者自身が説明用に描いたと思われる図と、イラスト担当者が言葉による説明の理解を助けるために描いた図とを併用している。前者は問題ないが、後者のできばえには満点をつけられない。かえってわかりにくくしてしまうものも、少し含まれている。また、たとえ一般読者向けの科学書でも、より詳しく学びたい人に向けた文献リストと索引とを添えておく方が親切だろう。
卵を割らずに黄身がとり出せるか?四次元の世界ではそれが可能だという。真実とはかくも奇妙なものなのか。アインシュタインがついに見つけた実在する四次元から、超多時間理論、重力波まで、絵には描けない世界を丁寧に語り尽くす。
著者について
■都筑卓司(つづきたくじ)
1928年浜松市生まれ。海軍兵学校、旧制一高から東京文理科大学物理学科へとすすみ、同大学院では統計力学を専攻。物理学の全分野にわたって幅広い知識をもつ。横浜市立大学で教鞭をとり、同大学名誉教授。一見いかにも学究タイプの風貌なれど実に「多芸多才」。旅が好きで日本全国未踏の街はほとんどない。ブルーバックスの著作は17冊(うち共著1冊)。累計300万部を超える。2002年7月惜しくも逝去された。
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