名盤 SPRING スプリング 早春の幻+3 1970年 メロトロン満載


イギリスのプログレッシブ・ロックなバンド:Springが1970年に発表したバンド唯一の同名アルバム「Spring」。
Springは、1970年に、イギリスはレスターシャ―州のレスタ―を拠点に、Pat Moran(ボーカル、メロトロン)、Ray Martinez(ギター、メロトロン)、Kipps Brown(ピアノ、オルガン、メロトロン)、Adrian ‘Bone’ Maloney(ベース)、のちに、同国イギリスのロックバンド:Dire Straitsのメンバーとして有名になるPick Withers(ドラム)の5人編成で結成されたバンドです。
その音楽の特徴に、Pat Moran、Ray Martinez、Kipps Brownの3人がそれぞれメロトロンをプレイすることによる「トリプルメロトロン」の存在に触れなければなりません。ただし、その「トリプルメロトロン」の存在があろうとも、たとえば、第1期King Crimsonの初期楽曲(名曲「Epitaph」)に見る叙情さや陰鬱さの一端が垣間見えるメロトロンと同様に、3台あるからと云って、いずれの楽曲にもメロトロンが多用されているというわけではないのです。
たしかに、アルバムの冒頭曲と最終曲で印象深きメロトロンの旋律があるのですが、12弦ギター、エレクトリック・ギター、オルガンをメインとしたアンサンブルに、力強くもあたたかみのあるメロディックなメロディラインには、ブリティッシュ・ロックのフォーク系や、プログレ・フォーク系のエッセンスがベースにあるのではないかと思います。有名デザイナー:Keefによる見開き3面のアートワークも印象的に、
トリプルメロトロンはアレンジの1つに、早春を想起させるような素朴なプログレ・フォーク系のサウンドが聴けるアルバムです。
幽玄さあるメロトロンの調べにばかり耳を奪われてしまうのではなく、アルバム全体をバランス良く聴いた方が、バンドが目指した音楽の良さを感じられると思うのです。

1. The Prisoner (Eight By Ten)(邦題:囚人)
2. Grail(邦題:大きら)
3. Boats(邦題:ボートの歌)
4. Shipwrecked Soldier(邦題:離波した兵士)
5. Golden Fleece(邦題:金の髪)
6. Inside Out
7. Song To Absent Friends (The Island)(邦題:去りし友への歌)
8. Gazing(邦題:凝視)

[Bonus Tracks]
9. Fool’s Gold
10. Hendre Mews
11. A World Full Of Whispers(邦題:ささやきに満ちた言葉)
ボーナスとして、1972年に制作を断念となった幻の2枚目のアルバムの収録予定だった3曲が収録されています。

なんだかんだいっても、メロトロンが好きな方にとっては、当アルバムにトリプルメロトロンの存在がフォーカスされ、興味をひくことは間違いないと思いますので、きっかけはメロトロンとして聴きたい方にもおすすめです。
また、プログレ・フォーク系のバンドで、アシッド・フォーク系やアート・ロック系など、かすみかかったサウンドが聴きたい方に、1970年代初頭のブリティッシュ・ロックの1つのシーンを切り取った忘れがたき1枚として、聴きたい方におすすめな1枚です。

帯・解説付