A8380【垂涎三尺】BMW M 至高の輝き!18金無垢 デジアナ メンズQZ 純正箱冊子付 115g 伝説級レアウォッチ 19.5cm 115.0g 34.5mm




【オークションタイトル】
A8380【垂涎三尺】BMW M 至高の輝き!18金無垢 デジアナ メンズQZ 純正箱冊子付 115g 伝説級レアウォッチ
【商品説明】
究極のコレクターズアイテム、BMW Mシリーズ 18金無垢デジアナウォッチ。
自動車愛好家、そして時計コレクターの皆様、まさに「垂涎三尺(すいぜんさんじゃく)」の逸品がここにございます。BMWの魂とも言える「Mシリーズ」の名を冠した、極めて希少な18金イエローゴールド無垢製デジアナクォーツウォッチでございます。その圧倒的な存在感と輝きは、まさに伝説級。市場に出回ることは奇跡に近い、大変貴重なモデルです。
■ デザインと歴史の融合が生み出す、唯一無二の存在感
この時計のデザインは、BMW Mシリーズが持つダイナミズムと革新性を見事に体現しています。
まず目を奪われるのは、独特のU字型、あるいは馬蹄型とも称されるベゼルデザイン。これは単なる奇抜さではなく、当時の先進性とBMWのアイデンティティを象徴するフォルムと言えるでしょう。アイボリーカラーの文字盤には、中央に誇らしくBMW Mのロゴが配され、その血統を静かに主張します。
アナログの時分針はクラシカルな視認性を確保しつつ、下部には多機能デジタル表示(時刻、カレンダー、タイマー、アラーム、クロノグラフ等)を搭載。これは1980年代から90年代にかけて流行した、スイス時計界の新たな挑戦であり、高級ブランドもこぞって採用したスタイルです。BMW Mシリーズが常に最新技術を追求してきたように、この時計もまた、当時の最先端を行く機能美を宿しています。
ケース、ブレスレットに至るまで全て18金無垢という贅沢な仕様は、単なる販促品ではなく、特別な顧客やVIP、あるいはMシリーズの成功を祝う記念品として、ごく少数のみが製造された可能性を示唆しています。その総重量115.0gというずっしりとした重みが、純粋なゴールドの価値と、この時計が持つ特別な歴史を物語っています。
■ 受け継がれる「M」のスピリット
BMW Mシリーズは、モータースポーツにおける輝かしい戦績と、それをフィードバックした高性能市販車で世界中のファンを魅了し続けてきました。この時計は、そんなMの情熱、精度、そして妥協なきクラフトマンシップを腕元で感じさせてくれる稀有な存在です。
「SWISS MADE」の刻印は、時計製造における最高峰の品質を保証するもの。細部に至るまで丁寧に仕上げられたゴールドの輝きは、所有する喜びを一層深めてくれることでしょう。
■ 資産価値としても期待される逸品
このような特殊な背景を持つブランドウォッチ、特に貴金属無垢モデルは、年々その希少価値を高めています。純正のBMW Mロゴ入りBOXと冊子が付属している点も、コレクターにとっては見逃せないポイント。単に時を告げる道具としてだけでなく、動産価値、美術的価値をも兼ね備えた、まさに「語れる」逸品です。
この機会を逃せば、次に出会える保証はございません。
BMWを愛し、特別な時計を求める、真の理解者様からのご入札を心よりお待ちしております。
【スペック】
【ご注意】
この素晴らしい時計が、新たなオーナー様の元で輝き続けることを願っております。
皆様のご参加を、心よりお待ち申し上げます。


以下、所謂ブラクラ妄想ショートショートです~~


金の軌跡、愛の刻印
第一章:邂逅と記憶の鍵
霧雨がアスファルトを濡らす初冬の夜、古都の片隅に佇むオークションハウスは、選ばれた者たちの熱気で静かに満たされていた。久我健一(くが けんいち)は、その喧騒から少し離れた場所で、シャンパングラスを片手に、出品リストの最後のページに目を凝らしていた。目当ては一つ。ロット番号A8380、「BMW Mシリーズ 最高級18金無垢 デジアナ メンズQZ」。写真で見たその時計は、彼の心の奥底に眠っていた何かを揺さぶる、不思議な引力を持っていた。
健一は三十代後半。若くしてIT企業を立ち上げ、成功を収めたものの、その過程で多くのものを犠牲にしてきた自覚があった。家族との時間、そして、純粋な情熱を追いかける心の余裕。最近、ふと立ち止まり、自分が本当に求めているものは何なのかを問い直す日々が続いていた。そんな時、偶然目にしたこの時計の広告が、彼の日常に小さな波紋を投げかけたのだ。
「次のロットは、A8380。BMW M、18金無垢デジアナウォッチでございます。スイスメイド、純正ボックス、冊子付き。スタート価格は…」
オークショニアの声が響き、スポットライトがベルベットのクッションに鎮座する黄金の時計を照らし出した。独特のU字型、あるいは馬蹄型とも言えるケースデザイン。アイボリーの文字盤には、鮮やかなBMW Mの三色ロゴが誇らしげに輝き、アナログの針と下部のデジタル表示窓が、クラシカルでありながらも先進的な印象を与える。ずっしりとした金の塊が放つオーラは、他のどの宝飾時計とも異質だった。それは、単なるラグジュアリーを超えた、ある種の「魂」のようなものを感じさせた。
健一の胸が高鳴った。それは、幼い頃、今は亡き父の書斎で見た設計図の記憶と重なった。父はBMWのエンジニアで、Mシリーズの開発に情熱を燃やしていた。父がスケッチブックに描いていた、未来的でありながらも力強い時計のデザイン。それは、この時計に驚くほど似ていたのだ。「いつか、こんな時計を自分の手で…」父の呟きが、時を超えて健一の耳に蘇る。
「500万」
健一は静かに札を上げた。会場にどよめきが走る。予想以上の高値からのスタートだったが、健一に迷いはなかった。
「550万!」
凛とした女性の声が、健一のすぐ後方から響いた。振り返ると、黒いシルクのドレスに身を包んだ、意志の強そうな瞳を持つ女性が立っていた。長い黒髪が艶やかに揺れ、その手には同じくオークションのパドルが握られている。彼女の視線は、一点の曇りもなく、舞台上の時計に注がれていた。
彼女は、朝霧玲奈(あさぎり れな)と名乗る女性だった。美術修復家として国際的に活躍しており、その鋭い審美眼は業界でも知られていた。彼女もまた、この時計に特別な理由があってここに来ているようだった。
競りは、健一と玲奈の一騎打ちの様相を呈した。「600万」「650万」…金の重みだけでなく、そこに込められたであろう歴史や物語の価値が、価格を押し上げていく。玲奈の表情は険しく、白い頬にはうっすらと紅が差している。彼女の指が、ドレスの生地を微かに握りしめているのが見えた。その仕草に、彼女のこの時計にかける執念のようなものを感じ、健一は僅かな戸惑いを覚えた。
「…1000万」
健一が告げた数字に、会場は水を打ったように静まり返った。玲奈の肩が、小さく震える。彼女は唇を噛みしめ、しばらく時計を見つめていたが、やがてゆっくりとパドルを下ろした。その瞳には、悔しさと、諦めきれない未練のような光が宿っていた。
ハンマーが鳴り響き、時計は健一のものとなった。
オークションが終わり、健一は別室で時計を受け取った。ビロード張りの純正ボックスには、BMW Mのロゴが輝いている。重厚な蓋を開けると、黄金の時計が鎮座していた。手に取ると、115.0gという金の重みがずっしりと腕に伝わる。冷たい金属の感触。U字型のケースは滑らかで、丹念に磨き上げられている。文字盤の「SWISS MADE」の刻印が、その品質を物語る。デジタル表示は「10.09 39」と現在の時刻を示していた。それは、まるで過去と現在が融合したような、不思議な感覚だった。
健一は、ふと玲奈の姿を探した。彼女は既に会場を後にしており、その姿はどこにもなかった。ただ、彼女が座っていた席に、小さなハンカチが落ちているのに気づいた。繊細なレースの縁取りが施された、上質なシルクのハンカチだった。そこには、微かにジャスミンのような、甘くも切ない香りが残っていた。
その夜、健一は自室の書斎で、手に入れたばかりの時計を飽きることなく眺めていた。父の遺品の中から探し出した古いスケッチブックと見比べる。やはり、似ている。U字型のベゼル、アナデジのコンビネーション。父はこの時計の存在を知っていたのだろうか。あるいは、この時計こそが、父が夢見た理想の形だったのだろうか。
時計のブレスレットの裏蓋には、細かな傷と共に、小さなホールマークが刻まれていた。金の純度を示す「750」の文字。そして、製造者を示すであろう小さな紋章。それは、父の日記に度々登場した、スイスの小さな時計工房のマークに酷似していた。父は、その工房の職人と親交があったはずだ。
健一の心に、新たな疑問と、疼くような好奇心が芽生えていた。この時計は、一体どんな物語を秘めているのか。そして、あの朝霧玲奈という女性は、なぜあれほどまでにこの時計を欲しがったのか。彼女の瞳の奥に揺らめいていた悲しみと情熱の正体は何なのか。
金の時計は、静かに時を刻み続けていた。それは、健一の過去と現在、そしてまだ見ぬ未来を繋ぐ鍵のように思えた。そして、その輝きは、彼自身の心の奥深くに眠る、忘れかけていた情熱をも呼び覚まそうとしているかのようだった。健一は、無意識のうちに、玲奈が残したハンカチをそっと握りしめていた。ジャスミンの香りが、彼の孤独な書斎に、微かな温もりを運んできた。
第二章:絡み合う糸、疑惑の影
数日後、健一は父の古い日記と設計図を手に、かつて父が親交を結んでいたというスイスの時計工房について調査を始めた。しかし、その工房は数十年前につぶれており、関係者の行方も杳として知れなかった。父の日記には、工房の親友だったという時計職人の名「アルマン」と、そして謎めいたイニシャル「R.S.」が繰り返し記されていた。R.S.とは誰なのか。父とアルマン、そしてR.S.の間には、どんな物語があったのだろうか。
そんな折、健一のもとに一本の電話が入った。声の主は、先日オークション会場で見かけた玲奈の知人だという美術商だった。玲奈が、健一にどうしても話したいことがある、と。指定されたのは、市内の静かな美術館に併設されたカフェだった。
約束の時間、健一がカフェに着くと、玲奈は窓際の席でハーブティーを飲みながら待っていた。オークションの時とは違い、柔らかいカシミアのセーターにパンツという装いで、幾分リラックスした雰囲気だったが、その瞳の奥には依然として緊張の色が浮かんでいた。
「先日は…申し訳ありませんでした。少し、熱くなってしまって」
玲奈はそう言って、小さく頭を下げた。
「いえ、こちらこそ。あの時計には、何か特別な思い入れがおありなのですか?」
健一が尋ねると、玲奈はカップを見つめながら、ぽつりぽつりと語り始めた。
「あの時計は…私の祖父の、形見のようなものなのです。正確には、祖父が長年探し続けていた時計でした」
玲奈の祖父、朝霧宗一郎(そういちろう)は、一代で財を成した実業家であり、時計コレクターとしても有名だった。しかし、数年前に他界。玲奈は、祖父の遺品を整理する中で、彼が亡くなる直前まで、ある特定のBMWの金時計を探していたことを知ったという。
「祖父の日記に、その時計のスケッチと、ある男性との約束のことが書かれていました。そして…その男性の名前は、久我誠一(くが せいいち)…あなたのお父様と同じ名前でした」
健一は息を飲んだ。父の名前が、玲奈の祖父の日記に?
玲奈は続けた。「祖父は、若い頃、誠一さんと共に、新しい時計ブランドを立ち上げようとしていたようです。あのBMWの時計は、その最初の試作品、あるいはコンセプトモデルだったのではないかと…しかし、何か大きな誤解が生じ、計画は頓挫し、二人は袂を分かってしまった。祖父は、そのことをずっと悔いていました。そして、誠一さんに謝罪し、友情を取り戻したいと願っていた。あの時計は、その唯一の手がかりだったのです」
玲奈の話は、健一の父の日記の内容と奇妙に符合していた。父の日記にも、親友との共同事業の夢と、その挫折、そして深い後悔が綴られていた。だが、父の日記では、裏切ったのは「R.S.」という人物であり、そのせいで親友アルマンとも疎遠になったと読めた。玲奈の祖父、宗一郎のイニシャルは「S.A.」。R.S.とは別人だ。
「お父様の日記には、私の祖父のことは何と?」
玲奈が不安げに尋ねる。健一は、父の日記に書かれた「R.S.」の裏切りと、それによって失われた友情について話した。玲奈の表情が曇る。
「では…やはり、祖父があなたのお父様を裏切ったと…?」
「断定はできません。しかし、父の日記にはそう受け取れる記述があります」
二人の間に、重苦しい沈黙が流れた。互いの父と祖父が、かつて深い友情で結ばれ、そして悲しい形で別れてしまった。その過去の断片が、今、目の前にある金の時計を通じて、二人を繋いでいる。
「…信じられません。祖父は、そんなことをするような人では…」
玲奈の声は震えていた。健一は、彼女の悲痛な表情を見て、胸が痛んだ。しかし、父の無念を思うと、簡単には彼女の言葉を受け入れることができなかった。
その日から、健一と玲奈は、複雑な感情を抱えながらも、共に過去の真実を探ることになった。健一は玲奈に、父の残したスケッチブックや日記の一部を見せ、玲奈もまた、祖父の遺品の中から見つかった手紙やメモを健一と共有した。
調査を進める中で、二人の距離は少しずつ縮まっていった。玲奈の美術修復家としての一面に触れる機会もあった。彼女のアトリエを訪れた健一は、古い絵画や彫刻に新たな命を吹き込む彼女の真摯な姿に感銘を受けた。アトリエには、微かにジャスミンの香りが漂っていた。それは、オークション会場で拾ったハンカチと同じ香りだった。
ある雨の夜、玲奈のアトリエで、二人は遅くまで資料を読み解いていた。窓を叩く雨音だけが響く静かな空間。暖炉の炎が、壁にかけられた修復途中の聖母像を柔らかく照らしている。金の時計は、テーブルの上で、その炎の光を反射して鈍い輝きを放っていた。
ふと、玲奈が健一の腕の時計に目を留めた。
「その時計…やはり、素晴らしいですね。まるで、魂が宿っているみたい」
彼女の指先が、ためらいがちに時計のU字型のケースに触れた。金の冷たさと、彼女の指の温かさが、健一の肌に奇妙な感覚を呼び起こす。
「もし…もし本当に私の祖父があなたのお父様を裏切ったのなら、この時計は、その罪の象徴なのかもしれませんね」
玲奈の声は、雨音に消え入りそうにか細かった。
健一は、彼女の細い肩をそっと引き寄せた。彼女の髪から漂うジャスミンの香りが、健一の心を乱す。
「まだ、そうと決まったわけじゃない。真実が分かるまでは…」
言葉とは裏腹に、健一の心の中では、玲奈への不信感が完全に消えたわけではなかった。彼女は本当に祖父の無実を信じているのか、それとも、この高価な時計を何らかの形で手に入れようとしているのではないか…そんな疑念が、黒い影のように心をよぎる。
玲奈もまた、健一に対して複雑な感情を抱いていた。彼の父を裏切ったかもしれない祖父の孫である自分。健一の瞳の奥に時折見える、鋭い光。それは、父の無念を晴らそうとする復讐心ではないのか。
互いに惹かれ合いながらも、見えない壁が存在する。金の時計は、二人を繋ぐ絆であると同時に、二人を引き裂くかもしれない過去の象徴でもあった。
その夜、玲奈は健一に、祖父が残した古い写真を見せた。そこには、若き日の宗一郎と、もう一人の男性が笑顔で肩を組んでいる姿が写っていた。その男性の風貌は、健一の父、誠一にどこか似ていたが、別人だった。写真の裏には「アルマンと共に。夢の始まりの日」と記されていた。アルマン…父の日記に出てきたスイスの時計職人。そして、もう一枚の写真。そこには、宗一郎とアルマン、そして美しい女性が写っていた。女性は、どこか玲奈に面影が似ている。
「この女性は…私の祖母です」玲奈が言った。「祖父とアルマンさんは、若い頃、私の祖母を取り合ったと聞いています。結局、祖母は祖父を選びましたが…それが、何か関係しているのでしょうか」
健一の脳裏に、父の日記の一節が蘇った。「友情は、時に些細な誤解と、女の涙によって、脆くも崩れ去るものなのか…」
複雑に絡み合った人間関係の糸。疑惑の影は、ますます深まっていくようだった。金の時計は、その全てを知っているかのように、静かに輝き続けていた。
第三章:真実の扉、解ける誤解
父の日記と玲奈の祖父の遺品、そしてアルマンという共通の知人の存在。健一と玲奈は、これらの手掛かりを元に、スイスへ飛ぶことを決意した。かつてアルマンが工房を構えていたというジュラ山脈の麓の小さな村、ラ・ショー=ド=フォン。そこに、全ての謎を解く鍵が眠っているかもしれない。
雪に覆われたジュラ山脈の風景は、厳しくも美しい。二人は、古びた記録を頼りに、アルマンの工房があったとされる場所を探し当てた。そこは、今は廃墟同然の小さな建物だったが、壁には色褪せたBMWの古いポスターが貼られ、隅には錆びついた時計製造の工具が残されていた。まるで時が止まったかのような空間。
近隣の住民に聞き込みをすると、アルマンは数年前に亡くなっていたが、彼の息子が今も村で小さな時計修理店を営んでいることが分かった。緊張しながらその店を訪ねると、初老の男性が温かく二人を迎えてくれた。彼こそが、アルマンの息子、ピエールだった。
ピエールは、父アルマンから、日本の二人の友人、誠一と宗一郎のことをよく聞かされていたという。そして、彼らが共同で夢見た時計プロジェクトのことも。
「父は、二人との友情が断たれてしまったことを、生涯悔いていました。特に、誠一さんのことは…本当に残念がっていました」
ピエールは、奥から古い木箱を持ってきた。その中には、アルマンが保管していた手紙やスケッチが大量に収められていた。その一つに、健一は見覚えのあるイニシャル「R.S.」が書かれた手紙を見つけた。差出人は、レイモン・シュナイダー。かつてアルマンの弟子だったが、野心家で、金銭トラブルを起こして工房を去った人物だった。
手紙の内容は衝撃的だった。レイモン・シュナイダーは、誠一と宗一郎、そしてアルマンが進めていたBMWコンセプトウォッチの設計図の一部を盗み出し、それを別のメーカーに高値で売り渡そうとしていた。そして、その罪を宗一郎に着せようと画策し、偽の証拠を誠一に送りつけていたのだ。さらに、宗一郎とアルマンの間にあった、玲奈の祖母を巡る感情的なもつれを利用し、三人の友情に決定的な亀裂を入れた張本人だった。
「なんと…」健一は絶句した。父が信じていた「R.S.の裏切り」は、レイモン・シュナイダーという全く別の人物の仕業だったのだ。そして、玲奈の祖父、宗一郎は、むしろ被害者だった。
玲奈は、ピエールが見せてくれたもう一つの手紙を手に取り、震える声で読み始めた。それは、宗一郎が晩年、アルマンに宛てて書いたものだった。
「友よ、アルマン。そして、今は亡き誠一へ。私の人生最大の過ちは、あの時、君たちの言葉を信じず、レイモンの嘘に踊らされてしまったことだ。愛する妻を巡る嫉妬と、若さゆえのプライドが、私を盲目にさせた。誠一との夢だったBMWの時計…あの時計を見るたびに、私の胸は張り裂けそうになる。せめて、彼の子息に、この時計を、そして私の心からの謝罪を届けたい。それが、私の最後の願いだ…」
手紙の最後は、涙で滲んでいた。
全ての誤解が、雪解け水のように流れ去っていく。玲奈の祖父は裏切り者ではなかった。健一の父も、最後まで友を信じることができなかった自分を責めていたのかもしれない。嫉妬、誤解、そして第三者の悪意が、純粋な友情と夢を引き裂いた悲劇。
玲奈は、健一の胸に顔をうずめて泣きじゃくった。長い間の心の重荷が、ようやく解き放たれた安堵感と、祖父の無念を思った悲しみが入り混じった涙だった。健一は、彼女の震える体を強く抱きしめた。自分の父も、同じように苦しんでいたのかもしれない。そう思うと、熱いものが込み上げてきた。
テーブルの上には、あの黄金のBMW Mウォッチが置かれている。そのU字型のケースは、まるで二人の涙を受け止めるかのように静かに輝いていた。文字盤のMロゴは、三人の男たちの情熱と友情の証。そして、「SWISS MADE」の刻印は、国境を越えた絆の象徴。デジタル表示が示す現在の時刻は、過去の悲劇を乗り越え、新しい未来へと時が進み始めたことを告げているかのようだった。
ピエールは、そっと二人に温かい紅茶を差し出した。
「父も、これでようやく安らかに眠れるでしょう。そして、誠一さんも、宗一郎さんも…天国で再会し、きっと笑顔でこの時計を見守ってくれていますよ」
彼の言葉は、冷え切った二人の心に、温かい光を灯した。
その夜、二人は村の小さな宿に泊まった。窓の外には、満月が雪景色を幻想的に照らしている。部屋には暖炉が燃え、パチパチと薪のはぜる音が静かに響く。
玲奈は、健一の腕にそっと自分の手を重ねた。
「ありがとう、健一さん。あなたがいなければ、私は一生、祖父を誤解したままだったかもしれません」
「僕の方こそ。父の無念を晴らすことばかり考えて、君を疑ってしまった…本当にすまなかった」
言葉は少なかったが、二人の間には、もはや何のわだかまりもなかった。暖炉の炎が、玲奈の頬をバラ色に染めている。その潤んだ瞳に見つめられ、健一は強い衝動に駆られた。
彼は玲奈の顔を引き寄せ、その唇に自分の唇を重ねた。最初はためらうように、そして次第に深く、お互いの温もりを確かめ合うように。ジャスミンの香りと、暖炉の木の香りが混じり合い、部屋を満たす。金の時計の冷たさとは対照的な、肌と肌が触れ合う熱。それは、長い間凍てついていた心が溶け出すような、甘美で切ない瞬間だった。
玲奈の細い指が、健一の背中に回る。彼女の吐息が、健一の首筋をくすぐる。それは、罪悪感や疑念から解放された、純粋な愛情の交歓だった。
「この時計が…私たちを導いてくれたのね」
玲奈が、健一の胸に顔をうずめながら囁いた。
健一は、彼女の髪を優しく撫でながら、窓の外の月を見上げた。金の時計は、今、二人の愛の証人として、静かに輝いている。それは、過去の悲劇を乗り越え、新しい物語を紡ぎ始めるための、希望の光だった。
第四章:未来への針路、永遠の輝き
スイスから帰国した健一と玲奈の関係は、以前とは比べものにならないほど深く、確かなものになっていた。過去の誤解は解け、互いの家族が抱えていた痛みを共有したことで、二人の魂は強く結びついた。そして、彼らの心の中には、新たな夢が芽生え始めていた。それは、健一の父・誠一と玲奈の祖父・宗一郎、そしてアルマンが果たせなかった、オリジナルの時計ブランドを立ち上げるという夢だった。
「僕たちの手で、彼らの夢を形にしないか」
ある春の日、桜並木の下を歩きながら、健一は玲奈にそう切り出した。玲奈は、一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに力強く頷いた。
「ええ、ぜひ! あのBMWの時計に込められた情熱と、三人の友情の物語を、今度は私たちが未来に繋いでいくのよ」
そこからの日々は、情熱と創造性に満ちていた。健一は事業計画と資金調達に奔走し、玲奈は持ち前の美的センスと修復家としての知識を活かして、時計のデザインコンセプトを練り上げた。もちろん、その中心には、あの18金無垢のBMW Mウォッチがあった。U字型のケース、アナデジのコンビネーション、そして何よりも、そこに込められた「駆け抜ける歓び」と「妥協なきクラフトマンシップ」というMの精神。
彼らは、かつてアルマンの工房があったラ・ショー=ド=フォンの近くに、小さなアトリエを構えることを決めた。ピエールも喜んで協力してくれることになり、現地の若い時計職人たちも彼らの夢に共感し、集まってきた。ブランド名は「AURUM(アウルム)」。ラテン語で「金」を意味し、同時に夜明けの光「AURORA」をも想起させる、希望に満ちた名前だった。
数えきれないほどの試行錯誤と、時には意見の衝突もあった。しかし、二人は互いを深く信頼し、支え合った。健一の腕には常にあのBMW Mウォッチが輝き、それがプロジェクトの原点であり、進むべき道を示す羅針盤となっていた。玲奈は、健一がその時計を見るたびに浮かべる、父への敬愛と未来への決意に満ちた表情が好きだった。
そして、一年後。ついにAURUMブランドの最初のコレクションが完成し、東京で発表会が開かれる日がやってきた。会場には、時計業界の関係者、メディア、そして健一と玲奈の友人たちが詰めかけていた。スポットライトを浴びて登壇した健一は、少し緊張した面持ちでマイクを握った。
「本日は、AURUMの誕生にお集まりいただき、誠にありがとうございます」
彼は、父と玲奈の祖父、そしてアルマンの物語を語り始めた。三人の友情、夢、そして悲しい誤解。そして、その全てを繋いだ一台のBMW Mウォッチ。彼の言葉は誠実で、情熱に溢れ、聴衆は静かに聞き入っていた。時折、玲奈と目が合うと、彼女は励ますように微笑んでくれた。
「AURUMの時計は、単なる時を告げる道具ではありません。それは、人と人との絆、受け継がれる想い、そして未来への希望を象徴するものです。私たちの時計が、皆様の人生の輝かしい瞬間を刻むお手伝いができれば、これ以上の喜びはありません」
健一のスピーチが終わると、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
発表会のクライマックス。健一は、そっと玲奈の手を取った。
「玲奈…この一年、君がいてくれたから、ここまで来られた。君の才能、優しさ、そして強さが、僕を支えてくれた」
彼はポケットから小さなビロードの箱を取り出し、ひざまずいた。箱の中には、AURUMのロゴが刻まれた、シンプルながらも気品のあるゴールドの指輪が輝いていた。
「この時計が僕たちの過去を照らし、現在を結びつけ、そして未来への道を示してくれたように…玲奈、僕と共に、新しい時を刻んでいってほしい。結婚してください」
玲奈の瞳から、大粒の涙が溢れ落ちた。それは、喜びと感動、そして感謝の涙だった。彼女は言葉にならない声で頷き、健一は優しくその指に指輪をはめた。そして、自分の左腕にはめられたBMW Mウォッチを玲奈に見せる。
「この時計は、僕たちの始まりの証。そして、AURUMは、僕たちの未来の証だ」
再び、会場は祝福の拍手で満たされた。金の時計のずっしりとした重みが、健一の腕に確かな幸福感を伝えていた。U字型のケースは、まるで二人を優しく包み込むゆりかごのようにも、未来へ向かって大きく開かれたゲートのようにも見えた。純正の箱に刻まれたBMW Mのロゴは、今や二人の新たな門出を祝う紋章のようだった。
数ヶ月後、健一と玲奈は、新婚旅行も兼ねて、スイスのアルプスをドライブしていた。健一がハンドルを握るのは、最新のBMW Mモデルのオープンカー。助手席の玲奈の腕には、AURUMの最初のレディスウォッチが上品に輝いている。そして、健一の左腕には、二人の物語の始まりとなった、あの18金無垢のBMW Mウォッチ。
太陽の光を浴びてきらめく湖畔の道。風が二人の髪を優しく撫でる。
「最高の気分だね」健一が言うと、玲奈は幸せそうに微笑んで頷いた。
「ええ。まるで、夢みたい」
彼女は健一の腕の時計にそっと触れた。金の冷たさと、太陽の温かさが混じり合う。
「この時計がなかったら、私たち、出会えなかったかもしれないわね」
「ああ。そして、父さんたちの夢も、きっと埋もれたままだっただろう」
BMW Mのエンジンが、心地よいサウンドを奏でる。それは、過去から未来へと続く、希望に満ちたメロディーのようだった。金の時計は、二人の腕で、永遠に輝き続ける愛と、実現した夢の証として、これからも美しい時を刻み続けるだろう。彼らの前には、どこまでも続く青空と、輝かしい未来が広がっていた。そして、その道のりは、きっと「駆け抜ける歓び」に満ちているに違いなかった。