【 ポイヤックの年間ベストワイン 】
フランス・ボルドー地方のカベルネ・ソーヴィニョンの聖地メドックの中でも、ひときわ荘厳と言われる力強さを体現するシャトー「ピション・ロングヴィル・バロン」は、街道を挟んで「ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド」と並んでいます。
元来は、ピション・バロンとピション・ラランドは1つのシャトーでした。2つのシャトーの歴史は17世紀にまで遡ることができます。その時代のボルドーの議会長であったジャック・ドゥ・ピション・ロングヴィルによってシャトーの名声が高まり、長い間シャトーはその名声を維持し続けますが、当時の当主であったバロン・ジョセフ・ドゥ・ロングヴィルは5人の子供達にシャトーを分割。姉妹たち、男兄弟たちそれぞれが相続をして、現在の2つのシャトーとなったのです。
以来、姉妹が相続したピション・ラランドは滑らかで華やかな女性的なワインへ。男兄弟が相続したピション・バロンの方はがっちりとした壮大で厚みのある、ポイヤックらしい男性的なワインへと特徴付けられました。
その畑はジロンド川の真南に面し、「ラトゥール」や「レオヴィル・ラスカーズ」「レオヴィル・ポワフェレ」が隣接する絶好のロケーションに位置しています。
1933年以後は、ブティエ家が約50年に渡りシャトーを所有。その後はフランスの大手保険会社アクサ・ミレジムが経営を引き継ぎます。その資本力を生かし、シャトー・畑・セラーに至る大規模な改築を行い、近年さらに品質向上が目覚ましいシャトーとして注目を浴びています。
1998年は、ポイヤックの当たり年。力強い味わいのカベルネ・ソーヴィニョンが多く育ちました。飲み頃の1998年のバック・ヴィンテージですが、これだけ熟成していても尚、力強い果実味やタンニンを残した、男性的なワインです。
また、ピション・ロングヴィル・バロンの1998年は、『この年のポイヤックのベストワイン』に見事選出をされています。
濃いガーネットの外観。グラスからは、カシスやブラックチェリーの黒系果実とエスプレッソや葉巻などのスパイスのニュアンスが漂います。口に含むと凝縮感のある果実味が勢いよく広がり、明るい酸と繊細なタンニンがストラクチャーを形成。肉付きは良く、濃密な果実の風味が特徴です。余韻には杉、カカオやミントなど様々なのニュアンスが感じられ、鼻腔を心地良くくすぐります。
力強いピション・バロンながら熟成を経て女性的なエレガントな姿へ変貌する様には、驚かされるものがあります。 熟成は、既に26年。長熟のポテンシャルを十分に備えており、よりエレガントでクラシックな味わいへと変化していくでしょう。長い余韻も秀逸です。