青織部の徳利です。サイズの大きな物は数例紹介されていますが、酒徳利に使えるこうしたサイズの物は他に見た記憶がありません。あまりの珍しさに最初はまさかこんな物がと思いましたが、土質や重さ、底部の処理、織部釉の発色、表面の自然な時代擦れ等間違いありません。個人的にはもう少し筆の走りが良ければと言うところですがそれでも幕末には見られないおおらかな絵付けです。口辺の細い窯傷が金直しされています。正に出会いの一品。一流店にいっても見つからない青織部小形舟徳利を特別出品です。箱あり。・胴径11センチ・高さ15.3センチ・容量3合2勺・桃山時代 ※新規の方、評価の悪い方の入札は取り消す場合があります。商品到着後は速やかに取引ナビの受取連絡を入れて下さい。

(2023年 6月 9日 22時 14分 追加)
本歌の特徴としてもう少し詳しく説明をというお問い合わせをいただきましたのでこちらで説明いたします。土質についてですが、美濃桃山陶と言うとモグサ土と良く言われますが、織部に関しては徳利や向付、大鉢、香合等は明るいグレーの緻密で焼き締まる織部土と呼ばれる土が用いられています。特に還元がかかって織部釉がオリーブ系に発色した物はこの徳利の様にかなり硬質に焼けています。これに対し幕末の瀬戸赤津出来の復興織部の土は多孔質と呼ばれる細かな隙間を多く含む土質のため柔らかで味を吸いやすく土見せはかなり茶色っぽく変色していることが多いものです。当然重さも見た目より軽く感じます。底部についてですが、他の徳利と同様蛇の目状の広い畳付になっていますが高台内の円の直径より一周り大きな輪トチ痕があります。時代のない物は高台内に収まるように大きさを合わせて輪トチが付けられています。この特徴は盃の輪トチ痕に特に顕著です。また、底部の接地する部分が自然に擦れて驚く程滑らかになっており伝世を判断する上でも重要な要素になっています。釉薬については織部釉だけで時代を判別するのは不可能ですが、絵の部分に掛けられた釉に特徴が出ます。絵の発色にあまり影響しない半透明な釉で、時代のない物は志野釉だったりまったくの透明だったりします。この微妙な半透明感も独特のものです。絵付けについてですが、桃山の織部は器面全体を意識して絵付けが施されており絵が一部織部釉に隠れる程伸びやかなものです。幕末のものは絵を描く面積だけ意識しているため絵がこじんまりと収まっていることが多いと思います。他にも色々と判断材料はありますがこのぐらいの条件を満たしていれば本歌桃山の織部であると判断して良いと考えます。